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書評 一覧

2009年8月 6日

『無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉』

『無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉』

 70年代~80年代に輝いていたセゾングループの総帥であった堤清二氏と、マーケッター三浦展氏による、消費の未来、日本の将来を語った対談集です。
 かつて三浦展氏は、セゾングループの中でも有力なポジションを占めるパルコに在籍されており、数十年後にそのトップと元社員の対談が実現するというとても面白い組み合わせに興味をそそられました。

 セゾングループ絶頂期に田舎の若者であった私にとって、セゾン的なものは憧れでありイコンでした。同時代リアルタイムでは三浦氏の存在を知り得ませんでしたが、パルコのアクロス編集部での、消費社会のまっただ中にありながら消費社会に対する鋭い分析は、詩や音楽のようにとてもスリリングに感じました。
 一方堤清二氏のようにカリスマとして頂点を極めていた方であればあるほど、本当の肉声としての言葉はなかなか発掘されません。インタビューの名手で話を引き出すのが得意な三浦氏との対談という形式は、人間堤清二氏をあぶり出していて、大変貴重なものです。
 お二人の掛け合いのバランスがとれており、対話の流れから日本の20世紀型消費社会の拡大と終焉がわかりやすく導かれているのは、ダイアローグという形式とそのカジュアルな文体のなせる技なのかもしれません。

 amazonでのレコメンデーションで、『シンプル族の反乱』と本書が並んでいるのも2010年的な光景ではっとしました。よく考えればいずれも近著なので、至極当たり前のことなんですが。


『無印ニッポン―20世紀消費社会の終焉』 (中公新書)
堤清二、三浦展(著)

2009年7月17日

『社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』

『社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』

 メディア論は星の数ほどありますが、メディア論の題材として取りあげられている内容自体に興味を持つことがこれまで少なかったように思います。
 荻上チキさんによる本書はニューメディアが受けてきた試練の歴史を紐解きつつ、現代社会で話題となっているお笑いやゲームなど様々な社会現象をメディアという視点で鋭く論評されています。題材という点でとても面白く読み進めることができました。

 ただ新書という本書そのもののメディア形式とターゲットユーザーが理由になるかもしれませんが、バランス良く小さくまとまっている感じで、新しい驚きや何かしら気になる「引っかかり」がないようにも思います。
 しかしながら2009年の現在に生きている人間にとって、ちょっと理屈っぽいのは承知の上で、教科書的知識として読むのが良いのではないでしょうか。


『社会的な身体~振る舞い・運動・お笑い・ゲーム』
荻上 チキ (著)

2009年7月14日

『シンプル族の反乱~モノを買わない消費者の登場』

『シンプル族の反乱~モノを買わない消費者の登場』

 「下流社会」というキーワードを大ブレイクさせた三浦展氏の近著のテーマは、「シンプル族」です。
 私自身は三浦氏の世代区分によると『新人類』世代に含まれますが、シンプル族の特徴がほぼ当てはまりますので、2世代ほど先取りしていることになりそうです。というか、三浦氏も主張されている通り、昔から「シンプル族」は一定の割合で存在していたはずで、それが無視できないどころかボリュームゾーンになってきたことがポイントだと言えます。
 また、日本の過去を遡ってみると、「シンプル族」のライフスタイルは繰り返し現れており、右肩上がりの特殊な時期を除いて長い目で見ればこの国の主流に近いのではなかろうかと感じます。

 私が感心したのは、「シンプル族」という身も蓋もない凡庸とも感じる微妙なネーミング。最初は言葉から意図する対象の幅があまりに広すぎてなんだこりゃ駄作と感じました。しかし何度か読み返して反芻すると、やはりこれぐらいの言い方をしないと枠組みを表現しきれないのだと感じました。
 サスティナブルとかクリエイティブクラスなどという物言いではなく、日々の暮らしぶり、生活の現場を細かく観察していくと、「シンプル族」という地味な表現に落ち着いたのかなと思います。


『シンプル族の反乱』
三浦 展 (著)

2009年7月 6日

『ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術』

『ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術』 八重洲ブックセンターにて

 ユーザビリティ/UCDの業界では有名な棚橋さんの単著としては2冊目になるUser Centered Designの手法をベースにしたデザイン思考の考え方を解説した書籍です。内容はとても素晴らしいので、商品企画やサービスの設計に携わる方には一読をお勧めします。
 今回は内容そのものではなく、その書名や装丁などの外的要素から受ける印象について、ひとりの一般読者としてのユーザーエクスペリエンスを検証してみます。

 まず書名が『デザイン思考の仕事術』なので、自己啓発や仕事術といった一般ビジネス書の中に位置づけられます。これはとても重要なことで、コンピュータ関連書籍や(狭義の)デザインの書棚に置かれないというだけで、読者の幅やボリュームは確実に数倍に広がります。
 そして私自身も書店の店頭で手に取る際に、新書を手にするようなカジュアルな感覚で、パラパラと斜め読みをすることができました。

 また、落ち着きがある中で最近のトレンドを押さえたスタイルの装丁になっているので、手に取りやすい実に良いバランスの書籍になっていると感じます。前著の「ペルソナ作って、それからどうするの? ユーザー中心デザインで作るWebサイト 」にはこの感覚は全くありませんでした。実際のページボリューム以上に「重く」感じたものです。

 重く感じることが即悪いことではありませんが、今回の軽さはメリットです。読むきっかけを広げるという視点で言えば、「読み始めることができそう。」と感じることが大きな利点であり、書名や装丁、ページ数といった外的な要素の組み合わせである程度決定できることを実感として肌で掴むことができました。


『ひらめきを計画的に生み出す デザイン思考の仕事術』
棚橋 弘季 (著)

2009年6月 1日

『デザイニング・ウェブナビゲーション ―最適なユーザーエクスペリエンスの設計』

『デザイニング・ウェブナビゲーション ―最適なユーザーエクスペリエンスの設計』

 Webサイトのナビゲーションデザインの理論と実践を、豊富な実例を示して本格的に解説した、Webサイト制作者にとって参考になる書籍です。

 ナビゲーションという概念は、表現から構造まで様々な要素が絡み合っており、単純ではありません。本書を読むとそれが良くわかります。米国の事例が多いですが現存する有名Webサイトの実例がそのまま豊富に掲載されており、丁寧に読み込んで行けば、理論をかみ砕いて自分のものにすることができると思います。

 本書にはコンセントの長谷川さん、メディアプローブの浅野さんが監訳で関わっておられます。
 Webサイト上流設計工程から制作実務にかかわるプロデューサーやディレクター、チーフデザイナーには必読の書となるでしょう。


『デザイニング・ウェブナビゲーション ―最適なユーザーエクスペリエンスの設計』
James Kalbach (著)
長谷川 敦士 (監訳) 浅野 紀予 (監訳)
児島 修 (翻訳)

2009年5月24日

『イノベーションの神話』

 イノベーションという言葉に取り憑いている様々な神話について、軽妙な語り口ながら、奥深い内容をわかりやすく論じている書籍です。
 まえがきに、『本書はビジネス、歴史、文化、テクノロジーを溶かし込んだ「るつぼ」となっています。』とあります。本当にその通りで、著者の手によりアレクサンダー大王からカーク船長まで、縦横無尽にイノベーションが神話となってしまう事例が編み込まれ、読者に提示されています。
 読後にやっとわかったことですが、「るつぼ」であって初めてイノベーションの本質が理解できるのです。

 なぜイノベーションの本質が誤解され、神話になってしまうのか、取りあげられている例が秀逸で、書かれている対象の技術や人物、組織があたかも浮かび上がってくるように感じます。
 著者の鋭い視点は、歴史上の賢人もかつてのエクセレントカンパニーも、現在脚光を浴びているIT企業も、同じ目線で貫かれており、そこから見事な分析が行われています。

 イノベーションについてもやもやした感じをお持ちの方には、ぜひお勧めしたい一冊です。
 使いやすさについての概念も、イノベーションと密接に関係しています。「使いやすさの神話」にならぬようイノベーションという点から今一度考え直す必要があると感じました。

『イノベーションの神話』
Scott Berkun (著)
村上 雅章 (翻訳)

2009年5月18日

『コモンズ』

『コモンズ』 ローレンス・レッシグ (著)

 知人より話題作と推薦をいただいていたのですが、なかなかそのボリュームに恐れおののいて、読み始めることができませんでした。
 読んでみると、読む前の先入観と読後のイメージがかなり違いました。決して読みやすい本ではありません。コンピュータネットワーク技術や著作権などについて、ある程度の前提知識がないと読み進めるのは辛いと思います。思想についての書なので理系と文系の区別が無意味であることも、図らずも実感しました。

 特に著者が注目されている「アーキテクチャ」の問題に着目し、本質を解説するには、丁寧な記述が必要でありこれぐらいの大冊にならざるを得なかったのでしょう。
 インターネットの共有知こそ「コモンズ」であると著者は訴えます。インターネットの思想、本質について、これまでの議論とは違った切り口で、迫っていく姿はスリリングです。

 当然ながら紹介されている具体的事例が米国のものなので、日本では馴染みが薄いという点はありますが、コンテンツ制作やソフトウエア開発にかかわる人には一読をお勧めしたいと思います。ブロガーと言えども、いやブロガーだからこそ無自覚ではいけないと思います。インターネットで情報発信する人であればすでにコモンズであるインターネットの思想から何らかの影響を受けているのです。

『コモンズ』
ローレンス・レッシグ (著)
山形 浩生 (翻訳)

2009年1月 5日

『Mental Models - Aligning Design Strategy with Human Behavior』

『Mental Models -  Aligning Design Strategy with Human Behavior』

 新年よりAdaptive Pathの共同創設者の一人でもある Indy Youngの著書『Mental Models - Aligning Design Strategy with Human Behavior』に挑戦しています。

 ユーザーを理解するための手法「メンタルモデル」構築についての具体的方法が書かれています。この書籍はユーザー中心設計(UCD)の上流工程実践のためのツールだと感じました。ユーザーの態度や心理を分析するためのノウハウが惜しげもなく詰め込まれています。

 原書(英語)のためなかなか読み進められないのですが、豊富な例と図版をよりどころにとにかく最後まで読み進めたいと思っています。

『Mental Models - Aligning Design Strategy with Human Behavior』
Indi Young (著)

2008年12月22日

『ブリッジマンの技術』

『ブリッジマンの技術』

 科学技術など一般の人にとって馴染みの薄い専門領域を、一般の人にわかるように、「翻訳」し伝えるアウトリーチの活動を通して、著者は異なる考え方を持つ人々の間のコミュニケーションの難しさとそれを解決する大切さを知ります。
 そしてその啓発活動を通じて、具体的にどうやってその壁を乗り越えられるかについて、考察を深めていきます。
 乱暴にまとめると文系と理系、政治家と官僚、素人と専門家など異なる世界観、理解の仕方、哲学の間を取り持ち、上手に橋渡しをするのがブリッジマンの技術というわけです。

 この考えは、ユーザー中心設計の「ユーザー調査・観察」から人間行動のモデルを導き出す工程に密接に関連すると感じています。利用状況インタビューについても、この考えを応用できます。

 利用者が何気なく行っている動作や作業の表面的現象と、その背景にある真の行動理由を区別して導き出すには、ブリッジマンの技術に相当する翻訳、仲立ちの考え方を深く理解して、これを応用していく必要があると感じました。
 ただこれは言うは易く行うは難しの代表選手であり、地道にかつ本腰を据えて取りかからなければならない壮大なテーマです。


『ブリッジマンの技術』 (講談社現代新書) (新書)
鎌田 浩毅 (著)

2008年12月 5日

『文化の力 ~カルチュラル・マーケティングの方法~』

『文化の力 ~カルチュラル・マーケティングの方法~』

 書店の店頭では、地味な装丁で目立たないのですが、カルチュラル・マーケティングというコピーに惹かれふと手に取りました。
 大手広告代理店ご出身の著者による、マーケティングの現場に密着した視点と俯瞰した視点の双方により、日本文化を深く考察された味わい深い論考です。

 モノやコトの表面的現象とその本質に隠されたもの、日本と諸外国の違いまで、重層的な構成を経て、全体を読み終えた後に、ようやく『文化の力』というタイトルが示す意味が浮かび上がってきます。

 広告会社で長年実務に関わってこられたプロフェッショナルであるからこそ、いまの消費社会のどこに「力」が潜んでいるのかがよく見えるのだと思います。通読後の印象はアカデミックな文化論ですが、それぞれの論点の根拠となる細部を見る目は幅広く、かつ鋭いことに驚きます。

 デザインの実務に関わる方、ユーザビリティの研究者にもぜひご一読をお勧めします。使いやすいとは、その時代、その地域の文化に依存した問題なのです。


『文化の力 ~カルチュラル・マーケティングの方法~』
青木 貞茂 (著)

2008年11月24日

『ヨーロッパの目 日本の目~文化のリアリティを読み解く~』

『ヨーロッパの目 日本の目』

 在欧17年に渡るプランナーによる文化理解のための考え方を示した意欲的な著書です。著者の欧州でのビジネス現場の経験を経た本物の厳しいコミュニケーションの中から、欧州と日本を中心とした奥深い文化比較が行われています。

 欧州のデザインに現れる隠された文脈、歴史に裏打ちされた考え方、それらを観察する著者の視線は冷静ですが、深く熱いものを感じます。
 デザインの表層に現れるモノの背景には、そのデザインが生み出される国や地域の建築や日々の生活などに代表される様々な生活様式、ハイカルチャーからサブカルチャーまで諸々が文化、文脈として流れていると著者は説いています。

 不肖の持論ですが、このブログのテーマである「ユーザビリティ」や「使いやすさ」はまさに文脈・コンテキストの問題で、それは突き詰めていくと暗黙知の集合体であり、まさに文化の問題であろうと常々思っています。
 この考えを再認識させてもらった書籍の1冊がこの『ヨーロッパの目 日本の目』でした。

 文化差が生じないレベルでの「使いやすさ」とは、誰の目にも明らかで、検証、改善も比較的容易です。本当に難しいのは、文化差の生じない一定レベルの「使いやすさ」が解決されたあとの品質、満足感をいかに高めていくかという課題です。
 使いにくさまで至らなくても何気なく感じる違和感。この違和感がどこからくるか、何を表しているのか、文化というキーワードを通して、今後も研究テーマとして追求していきたいと思います。


『ヨーロッパの目 日本の目』
安西 洋之 (著)

2008年11月20日

『Subject To Change ~予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る~』

『Subject To Change ~予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る~』

 Peter Merholz(ピーター・マーホールズ)氏ほか4名のAdaptive Path社の主要メンバーによる、創造的な製品・サービス開発のための考え方の指針となる書籍です。敢えてジャンル分けすればデザイン戦略を基本にしたビジネス書といえるのではないでしょうか。

 いわゆるデザイナ向けの本ではありません。しかし広義のデザインについての本質的な議論を端的でわかりやすい文章で示しています。また、ユーザビリティ業界へも批判が書かれています。

 自分自身の乏しい経験の中からでも、広義のデザインが成功していくには一筋縄では進まず、様々な要素を解決していく必要があることを知りました。その中ではビジネスマインドを持ったデザイナ、デザインマインドを持った経営幹部にはそう簡単にお目にかかることはありませんでした。

 本書はそこに焦点が当たっており、専門化し縦割りになってしまった職能別のメンバーの知恵を結集して、真に利用者のためとはどういうことなのかを、共同作業の中から見つけていくことの大切さを強調しています。


『Subject To Change ~予測不可能な世界で最高の製品とサービスを作る~』
Peter Merholz (著)
Brandon Schauer (著)
David Verba (著)
Todd Wilkens (著)
高橋 信夫 (翻訳)

2008年9月28日

『明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法』

『明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法』

 これからの広告がテーマになっていますが、本書の本質はUser Centerd Designの本だと感じました。
 著者は広告代理店のクリエイティブディレクターで、コミュニケーション全体を「設計」する仕事をされています。

 いま消費者が根本的に変わったことから「消費者本位という視点」を追求しなければならないと説かれています。
 広告のアイデアやテクニックの前に、真の消費者の姿を理解すること、つまり徹底したユーザー視点の大切さ、ユーザー分析の重要さを、わかりやすい文章で訴えられています。
 広告の分野でもその道を究めた方から、User Centerd Designの考えとほとんど共通の方法論が出されているのは非常に興味深く感じました。

『明日の広告 変化した消費者とコミュニケーションする方法』
佐藤 尚之(著)

2008年8月31日

『インタラクションデザインの教科書 (DESIGN IT! BOOKS)』

インタラクションデザインの教科書

 米国における著名なユーザーエクスペリエンスに関するコンサルティング会社Adaptive Path社のDan Saffer(ダン・サファー)氏による、インタラクションデザインの解説書です。
 インタラクションデザインという言葉や概念は、まだまだ理解されているとは言えない状況だと思います。だからこそ世の中には使いにくい製品やサービスが溢れているのでしょう。本書ではそれを改善していくための手がかりや考え方を初心者にもわかりやすく簡潔に解説されています。

 著者も述べられていますが、デザインという言葉は本当に扱いが難しいと感じます。どうしても最終結果としての見た目に関心が集中しますが、本書ではデザインの定義が完全にデザインプロセスの上流にフォーカスされており、「設計」「グランドデザイン」の意味あいが非常に強いものです。

 本書でデザインとして取り扱う領域は想像以上に広範囲にわたりかつ深い内容で、果たしてデザイナーの担う領域かという気持ちも読後に生じました。しかしこれまでの製品やサービス開発のアプローチでは解決できなかった問題を統合していく新たな職能としてインタラクションデザイナーの存在価値が見えてきたように感じます。

『インタラクションデザインの教科書 (DESIGN IT! BOOKS)』
Dan Saffer (著), 吉岡 いずみ (翻訳), ソシオメディア株式会社 (翻訳)

2008年8月 8日

『About Face 3 インタラクションデザインの極意』

『About Face 3 インタラクションデザインの極意』

 ペルソナの理論と手法を最初に導入し世界に広めたVisual Basic の父と呼ばれるAlan Cooper(アラン・クーパー)氏によるAbout Faceの第3版です。
 Cooper氏のコンサルティング会社でのソフトウエアを中心とした製品開発のアプローチが「ゴールダイレクテッドプロセス」という方法論にまとめられています。

 デザインやインタラクションという用語を幅広く柔軟に捉える必要がありますが、新製品を開発する上で、どうやって利用者中心に考えるかという点が「スローガン」ではなく、「具体的手法・ノウハウ」として惜しげもなく記述されています。

 後半の具体的な事例やデザイン原則はもちろん有益ですが、本書の神髄は前半の「ゴールダイレクテッドプロセス」の方法論とその手法解説にあると思います。 Webシステムやソフトウエア製品を開発するマネージャクラスのシステムエンジニアや予算執行の権限を持つビジネスマネージャに一読をお勧めします。
 前半の「PERT I ゴールダイレクテッドデザインを学ぶ」と後書きは必読です。

『About Face 3 インタラクションデザインの極意』
(著者: Alan Cooper, Robert Reimann, David Cronin 訳: 長尾高弘)

2008年3月 3日

『Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書』

 ペルソナ構築に役立つ書籍を探していたところ、ぴったりの本を見つけました。サブタイトルに、「~ペルソナ活用によるユーザ中心ウェブサイト実践構築ガイド~」とありますが、タイトルに偽りなくまさに実践構築ガイドになっています。

 ペルソナ構築が中心になっていますが、ユーザー中心設計(UCD)プロセスの上流工程に、多くのパワーと紙面が割かれており、具体例がふんだんにあります。日々試行錯誤している実務者として非常に参考になりました。インタビューのコツや方法、予算や時間に応じての割り切り方なども優れものです。定量的な調査・分析法との関連などもこれまでのUCDの書籍になかった視点ですごく新鮮で有益でした。
 これまでこのような体系的でかつ具体的なガイドはなかったので、本当に役に立っています。


『Webサイト設計のためのペルソナ手法の教科書
~ペルソナ活用によるユーザ中心ウェブサイト実践構築ガイド~』
(著者: Steve Mulder・Ziv Yaar 訳: 奥泉直子 監訳: 佐藤伸哉)

2007年9月28日

インストラクションはシステムである。『理解の秘密―マジカル・インストラクション』

すごく魅力的な書物に出会いました。リチャード・ソウル・ワーマンという情報をわかりやすいものにすることに情熱を燃やし続ける”情報アーキテクト”の痛快、愉快な「インストラクション」についての深い考察です。サブカルチャーのテイストがたっぷりでイラストや構成も楽しめます。

人間中心設計とは書いていませんが、生身の人間である情報の送り手と受け手の立場にたった人間中心アプローチだと思います。ユーザビリティの概念を超えて、コミュニケーションとは何か、どうすれば具体的に伝達や意思疎通ができるか。本書はインストラクションのインストラクションです。

コミュニケーションできないことから生まれる悲喜劇のコンテキストが読者によく伝わってきます。意識することとトレーニングにより、よりよいインストラクションをとりまく環境ができるはずです。
もっともっと広く一般に読まれてもよい本だと思いました。


『理解の秘密―マジカル・インストラクション』
リチャード・ソウル ワーマン (著)
松岡 正剛 (翻訳)

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